お知らせ・クリエイターコラム

2020 / 12 / 18  

デザインポートフォリオの作り方

こんにちは。abalone運営責任者の山下です。

ここ最近で、デザイナー様からポートフォリオをいただくケースが多く、様々なポートフォリオを拝見させていただき、ディレクターの私から見て
「こんなポートフォリオがわかりやすい」「このポートフォリオは勿体ない」と思う事が多々あったので、あくまでディレクターの私から見て、相手に響きやすいポートフォリオについてお話させていただければと思います。

「実績がない」というのは言い訳

まだ実績がほとんどない見習いデザイナーのような方からもたくさんのポートフォリオをいただきました。
その際によく言われていたのが「まだ実績がなくて載せれるものが無いんです」というお言葉です。

ビジネスに直結しているお仕事としてのデザインを拝見させていただくのがベストではあります。
ただ、相手がデザイナーに成りたてであることを知った上でポートフォリオを見ているので、実績が少ない事はわかっています。

「私には仕事のチャンスがなかったので実績がないだけです。デザインには自信があります。」みたいなことを
口だけで言われても、だったら、それに代わるような自主制作デザインを10個でも20個でも掲載してくださいとしか思えないです。

実績は自分の手で作れます。
もちろん、利益の発生するものと比べると責任なども異なるので得られる評価が異なるかもしれませんが、それでも評価されます。

逆に、実績がない事を自分の課題だと捉えられない人は、デザイン以前に仕事をする人として評価を下げてしまうように思います。

 

デザイナーならデザインで伝えてほしい

これもポートフォリオが薄めの人に多いのですが、プロフィールのところに「デザインが好きでしょうがない」みたいなことを書いている人が何人もいました。
デザインが好きである事はデザインで伝えていただきたい。
デザインが好きでしょうがないのにポートフォリオが薄いという矛盾が不信感にしかならなかったりします。

上記でも書いたように、デザインが好きなのであれば、仕事上でお題を与えられずとも、描きたい気持ちが抑えられずに、自ら作品を生み出していくものだと思います。

いかにも「実績は少ないですが気持ちはあります」みたいなアピールをされても信用することはできません。

実は、これは私も大学生の頃に、就職活動の際に指摘されました。
大学生の頃は「企画部」などが花形に見えていたので、安直に企画部を志望したりしました。
その際に、私も、企画部に入りたいという想いで「企画が好き」と書いたりしたのですが、その際に面接官に「企画が好きだというなら、与えられなくても企画は出来るはずなのに何もしてこなかったのはおかしい。それを企画が好きだというのはただの嘘つきだ」と言われました。

このように、一般社会では、簡単に口にした言葉なんて意味を持たず、本心で語らなければ意味がありません。

 

もしくは、口にするならちゃんと行動で示す必要があります。もし「デザインが好き」と言いたいのであれば、与えられなくてもデザインの事を考えてデザインを描き続け、デザインが好きである事を実証する必要があります。

ドキュメントはPDFもあるとベター

SNSを利用する人も多いようですが、汎用性の高さを考えるならPDFがベターです。さらに贅沢を言えば、ダウンロードURLを用意しておいて、ダウンロードしに行けばいつでも最新のポートフォリオがダウンロードできるようになっていると、確認する側からするれば非常にありがたいです。

ポートフォリオはどこまで載せていい?

基本的には契約書に順じます。そのため、契約書を交わしていない場合、ポートフォリオに掲載したとしても良いと考えられます。
但し、直取引ではないような場合、間に入っている制作会社や代理店は、手間の問題からわざわざ契約書を結ばないような事もあります。
そのため「契約書を交わさなくても、勝手に実績に掲載してはいけないことくらいわかるよね?」という前提で考えている企業も多いです。

契約書を交わしていないのだから、掲載しても良いと判断することで、制作会社や代理店から信頼されなくなり、次の仕事に繋がらなくなってしまったり、その制作会社や代理店だけではなく、制作業界は狭いので、その制作会社や代理店の人が転職して他の制作会社や代理店に移った際にも、ブラックリストとしてみなされるため、権利を主張するだけの強引なポートフォリオ掲載は大きなリスクを背負うという事を理解しておく必要があります。

ポートフォリオも、公開用非公開用で掲載範囲を分けている人もいます。顧客に確認しても、非公開ならOKということもあります。

公開用とは主にWEBサイトやSNSなど、一般の方が見ようと思えば見れるようなものを指します。

非公開には少し段階があり、PDFや印刷などで相手に渡すことは出来るけど、一般公開していないモノと、実際のその場で画面や紙などで見せるだけで、相手の手元に残らないようにするようなものがあります。

どれであっても、契約上で実績公開NGになっていれば、やってはいけない事になりますが、事実上、その場で画面や紙などで見せて、相手の手元の残さないような場合は
「ここだけの話」というような形で実績紹介するようなケースも多いようです。

ポートフォリオのデザインはシンプルで良い

たまにポートフォリオ自体にやたらと装飾を施すようなタイプを見かけますが、私としては見にくいだけです。
それに、そういうポートフォリオを作る人だと
「相手が何を見たいのかを考えられないデザイナーなのかな」
と思ってしまいます。

ポートフォリオは作品のイメージがしっかりと伝わることが大事です。
作品以外の部分をごちゃごちゃさせてしまって作品の邪魔になるようなポートフォリオは、評価を下げてしまう可能性があるので注意が必要です。

ポートフォリオは常に準備を

デザイナーの方からコンタクトをいただいた際に「参考までにポートフォリオをいただけますか?」と伺うと「ちょっと情報が古いので最新版になったものを用意するので時間をください」と言われるケースがあります。

このこと自体には問題はありません。
ただ、そのために「1週間待ってください」と言われてしまうと、私の場合は「この人は仕事に対するスピード感が遅いのかな」と判断してしまいます。

そもそも私としては完ぺきなポートフォリオが欲しいわけではありません。判断できる程度に実績や作品が掲載されていれば良いんです。
それに1週間かかってしまうようなのであれば、そもそもとして仕事に対するスピード感がマッチしていません。

これはあくまで私の視点になってしまうので、すべての方がそういうわけではないとは思いますが、このようなアンマッチが生まれてしまう事があることもあるのだと念頭に置いていただけると良いのかなと思います。

古い作品は掲載しないという考えもアリ

このあたりは判断が難しいのですが、ポートフォリオを拝見させていただく際に、昔の実績が掲載されていて、あまり上手ではないデザインが掲載されているようなケースがあります。
私の場合は、こういうポートフォリオを見ると少し迷います。
このデザイナーはクオリティに波があるのかな?とか、苦手な分野があるのかな?とか色々と考えてしまいます。

もちろん必ずしもマイナスだとも限らず、こういうデザインも描けるのかなとか幅の広さを感じられるようなケースもあります。

ただ、あまりにデザイナー駆け出しの頃にデザインして、今の自分から見てクオリティが低いと感じられるようなモノであれば、ポートフォリオから外すことを検討する方が無難かもしれません。

ポートフォリオにプロフィールは必要か

私はポートフォリオに掲載されているプロフィールもしっかり読みます。ただ、無駄に気持ちだけをアピールするような内容が入っていても響きません。あくまで、どのような経歴を持っていて、どんなことをしていたのかを確認する程度です。
過去の経歴などを見て、こんなデザインが得意なのかなとか、昔はデザインに関わっていなくても、こんな業界にいたのであれば、こんなデザインを多く目にしてきたのかな、などと考えたります。

プロフィールをみて、実績にはないカテゴリーだけど、こんなデザインとかやってもらったらマッチするのかもしれないなどと考えたりもするので、経歴などは入っている方が読む側としては参考になります。

逆に、個人的には、好きな食べ物とか、好きな動物とか書かれていても「お友達にでもなりに来たのかな?」とか「保険屋さんみたいなプロフィールですね」程度にしか思わず、親近感がわいてくることはありません。

可能であれば単価感が書いてあると

これはあくまで読む側の立場だけのことを考えたことになりますが、ポートフォリオの最後の方に作業の単価表とかが入っていると発注しやすくなります。
もちろん、単価なんて相手によって微調整したいところだとは思うので、ポートフォリオに書いてしまう事が自分の首を絞める事にもなってしまうので、書いた方が良いというお話ではありません。

ただ、どんなサービスでも単価が記載されていると話がしやすいのでとても楽です。

実績の内容によって与える効果が異なる

ポートフォリオに掲載するものは「大手のモノの方が良い」とか「成功したモノが良い」とか考える人もいるようですが、それぞれで捉え方が違うので色々なケースが掲載できるなら色々なケースを掲載する方が良いです。

例えば大手のデザインを手掛けている場合、大手のデザインをやっているから良いデザイナーというわけではなく
「このデザイナーは大きなプロジェクトを体験したことがあるデザイナー」という評価になります。
逆に、個人商店を手掛けている場合は、そういう規模のデザインしか出来ない人と評価されるわけではなく
「個人商店をしっかりと相手に出来るデザイナー」という評価になります。
どちらが良いというわけでもなく、あくまで経験値なのかと思います。

デザインとしては個人商店を相手にしている方が判断しやすく、個人商店を相手にしている場合はある程度デザイナーの思うようにデザインをコントロールしやすいので、それがデザイナーの提供したかったデザインなのかなと判断したりします。(もちろん安価なサービスとして提供する場合は制作内容に制限を設けたりするようなこともあるかと思いますが)

逆に、大手のデザインを手掛ける場合は、判断する人も多かったりするのでディレクターなどの意向によって、デザイナーの持っている能力以上のデザインになることもあれば、デザイナーの能力を活かしきれずにクオリティの低いデザインになるような事もあります。

そのため、大手のデザインを手掛けている場合は、あくまで経験としてしかとらえにくく、大手を相手にしているから優秀なデザイナーであるという判断には至りません。

なので、どっちが良いとかは考えずに、実績として持っているのであれば掲載していくのが良いかと思います。

戦略的なポートフォリオが作れるならベストだけど

ポートフォリオを作る際に自分自身の強み伝えられるポートフォリオになっているのはベストだと思います。

「何でも出来ます」は「何もできません」とイコールだと言われるように、特徴のないクリエイターはオファーされにくいというのがあるのは事実です。

ただ、それは作品だけに限られた事ではありません。

「レスが早い」「単価が安い」「話しやすい」など様々な要素があっての戦略というのもあるので
裏付けもないのに「女性向けデザインが得意」とか「LPが得意」などの作風に対して無理に特徴を付けてしまうと、自身の魅力をうまく伝えられなくなってしまうようなこともあるので注意が必要です。

自身の力の中で最も強いものは「経験」です。制作に限らず、自分はどんな人生を歩んできてどんなことをしてきたのかが、きっと自分の強みのヒントになっています。
焦って、無理に強みを作り出そうとするよりも、まずはポートフォリオには実際の経験を掲載してみて、経験を積んでいきながら、方向性を絞ったポートフォリオに更新していくという方が良いやり方だと私は思います。